東野圭吾は、ミステリー作家として有名ですよね。
私は東野圭吾の作品が大好きで色々な作品を読んできましたが、とにかくミステリーの内容が細かくてどんどん引き寄せられる作品が多いです。
伏線や人間模様などがとても繊細に描かれていて、気付いたら読みふけってしまった…という方も多いと思います。
今回は、東野圭吾の作品のうちおすすめのものを紹介したいと思います。
大まかにジャンル別に紹介したので、参考にしてください。
ミステリー小説
夢幻花
この小説のおすすめポイントは、
- 伏線の回収が精巧で面白くて爽快
- 犯人が意外な人物でどんでん返し
です。
この小説がおすすめな点は、とにかく伏線の回収が上手で爽快なところです。
東野圭吾の作品は、基本的に伏線の回収がとても丁寧な印象があり、つい夢中で読み進めてしまう作品が多いですが、この作品は特にその特徴が強いです。
小説はプロローグから始まりますが、小説を読み進めていくにつれて、プロローグの意味が解き明かされていきます。
読み進めても、なぜ?と思う人間関係や状況が多く、最初は少し読み進めるのが遅くなってしまうかもしれませんが、小説の後半から、どんどん伏線が回収されて、点と点が繋がったり、謎めいていたことが明らかになり、読むスピードが速くなっていきます。
伏線が回収される感覚が爽快なので、一気に読めてしまう作品です。
また、犯人も最後まで予想ができないので、ミステリーの解き明かしとしても面白い作品です。
沈黙のパレード
この小説のおすすめポイントは、
- 黙秘という社会的な制度について考えさせられる
- 二転三転するストーリーにドキドキする
- トリックを考える面白さ
です。
この作品は、社会派・トリックを追いかけるミステリー性・真犯人を追うサスペンス性・物語の展開の大きさという、とてもバランスの取れた内容なので、映画化もされています。
まず、トリックを考えるのが面白く、ミステリー作品としての完成度の高さに感動します。
また、ただのミステリーではなく、どんどん物語が展開していき、人間模様が丁寧に描かれているので、犯人捜しに夢中になって、一気に読み進んでしまうのも魅力的です。
そして、最後には、犯罪を黙秘することに関して考えさせられる社会派的な作品でもある点も見逃せません。
恋愛ミステリー小説
恋のゴンドラ
この小説のおすすめポイントは、
- 人間模様に厚みがあって面白い
- 短編小説がつながる爽快さが気持ちいい
- 最後のどんでん返し
です。
この小説は、東野圭吾の作品には珍しい恋愛ミステリー小説です。
婚約者がいる広太が、婚約中にもかかわらず行った合コンで知り合った桃実とスノボ旅行に行ったことを皮切りに、広太・桃実・婚約者の関係がどのようになっていくのかについて、生々しい人間模様が丁寧に描かれながら進んで行きます。
登場人物の人間模様を描く短編小説がいくつか続き、最後にその小説が繋がっていく爽快感がたまりません。
また、最終的な結末に驚きのどんでん返しがあり、ジェットコースターに乗っているような感覚を味わえるのが魅力的な作品です。
社会派ミステリー小説
プラチナデータ
この小説のおすすめポイントは、
- 国家の陰謀が迫るドキドキ感
- 最後まで題名の意味が分からないミステリアス感
です。
この小説は、国家の陰謀とそれに巻き込まれる主人公というスケールの大きいストーリーが魅力的な作品です。
国家警察が国民の遺伝子情報システムを扱って犯罪を抑止するという社会問題を扱っており、自分にも無関係とは思えない話題に感じてしまうので、物語に入り込んでしまう感覚がありました。
国家の陰謀が最後まで分からずハラハラドキドキすると同時に、最後に本のタイトルの意味が分かったときの爽快感がたまりません。
国家の陰謀というスケールの大きな話が進む一方で、家族を亡くして感情を失い、データや数字のみにしか興味がない主人公が、人々との関わり合いの中で感情や人間味を取り戻していく過程も細かく描かれているので、ハートフルで落ち着きます。
スケールの大きい話を読みたい方は、ぜひおすすめな一冊です。
白鳥とコウモリ
この小説のおすすめポイントは、
- 被害者家族と被疑者家族の感情や立場の対比描写
- 最後の立場の逆転劇
です。
東野圭吾さんの作家40周年を記念して出版された長編小説なので、ボリューミーで分厚い本ですが、他の作品と同様、どんどん読み進めてしまうような止まらない小説です。
この小説は、ネタバレになってしまいますが、被疑者家族と被害者家族の立場が最後で大逆転するところが大きな読みどころになっています。
被害者家族はもちろんのこと、被疑者家族もSNSや報道によるバッシングなどの面で辛い思いをしており、社会的制裁を受けています。
この作品では、被害者家族と被疑者家族の双方の悲しみや辛さをわかりやすく対比して大きく描いています。
だからこそ、最後に被害者家族として過ごしていた家族が一変して被疑者家族になるときに、両者の立場の差が浮き彫りになって見えてくる仕掛けになっています。
タイトルが「白鳥とコウモリ」になっていますが、同じ鳥でも「白い白鳥(光)」と「黒いコウモリ(影)」という対局が入れ替わることを表しており、言い得て妙という感じです。
東野圭吾さんの作品なので、もちろんミステリーの仕掛けのエッセンスや人間模様や人間感情の繊細な描写がたくさんあり、悪人は必ずしも悪人ではない点や、人間の弱さなども細かく描かれているのは読みごたえがあります。
この本を読むと、犯罪事件の裏には被害者と被疑者の両方の家族が存在していて、そこには事件とはまた別の「事件やドラマ」が起こっていることを感じます。
また、被疑者家族へのバッシングや時効、えん罪など様々な社会課題について触れられていてテーマになっているので、現在の司法制度について考えさせられる一冊になっています。
SF系小説
ラプラスの魔女
この小説のおすすめポイントは、
- SF的な謎解きにわくわくする
- 場面がころころ変わるので没頭できる
- これまでの東野圭吾作品と違うテイスト
という点です。
東野圭吾さんの作家30周年を記念して出版された長編小説で、他の東野圭吾さんの作品とは少しテイストが違うと感じました。
東野圭吾さんの作品は、人間模様×科学ミステリー×サスペンスのバランスがよくて、特に人間描写が細かく描かれているのが多い気がします。
しかし、この作品は、SF的な空想科学ミステリーの要素が強くて、この謎解きが前面に出ている印象です。
題名にもある「ラプラスの魔女」の「ラプラス」とは、
フランス人数学者のピエール=シモン・ラプラスが提唱した概念で、「ある時点の力学的・物理学的な状態を完全に把握・解析する能力を持てば、未来の状態を確定的に知り得る」ということ
で、つまり、超能力を持っている状態のことです。
この小説は、主人公の女性が超能力を持っていて、超能力で事件が解決していく物語です。
東野圭吾さんの作品は、科学的な巧妙なトリックを解き明かす爽快さが1つの特徴で魅力的だったので、この小説を読み始めた時は、正直「う…っ」という拒絶反応みたいなのがありました(私はSFや非論理的な小説が苦手…)。
しかし、読み進めると、ラプラスについて丁寧に説明していたり、人間模様を細かく描いていたりするので、非日常的な内容を題材にしながら、しっかりと地に足の着いた設定になっているので、SF系が苦手な方でも十分に楽しめる内容でした。
逆に、ここまで空想科学ミステリーを軸にしているのに、実際的なサスペンス作品に仕上げるのはさすがな…と脱帽します。
また、登場人物が割と多く出てきて、物語の始めでは、それぞれの人物が別々の場面に登場するので、描写する場面や時間が頻繁にころころと変わります。
したがって、しっかりと集中して読まないと付いていけなくなってしまうので、物語に没頭して読みふけってしまう仕掛けもあるのが魅力です。
SFが苦手だな…という方には、あえて是非読んでみてほしい作品です。