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パウエルFRB迷走の代償の感想…ゼロ金利政策緩和の裏側がわかる!

投資

今日は、「パウエルFRB迷走の代償」(高見浩輔;日本経済新聞ワシントン支局主席特派員)を読みました。

投資を始めて数年経ちましたが、コロナ禍のトレードを経て、わが国の経済がFRBの政策決定にとても影響されることをひしひしと感じました。

コロナ禍のゼロ金利政策解除から利上げに至るまでのFRBの政策決定の裏側について、記者である者がドキュメンタリー風にまとめた一冊で、とてもおもしろかったので紹介します!

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本の紹介

この本は、ワシントン駐在記者が、FRBの政策決定の裏舞台をドラマチックに書いている本です。

FRBは、

  • 2020年3月~:新型コロナウイルスのパンデミックによる経済停滞によりゼロ金利政策を再開
  • 2022年3月~:ゼロ金利政策を解除して利上げを実施

しました。

この本では、2022年3月のゼロ金利政策解除から、その後の過去に類を見ない速いペースでの利上げ政策 の裏舞台を追っています。

この本は、政策決定の内容を単に批評・分析するのではなく、FRBの政策決定のプロセスを細かく記載し、FRBのパウエル議長を始めとするFRB議員など様々な人物の考えや思惑を交えながら解説しているので、とても生々しくて興味深い一冊です。

また、アメリカの社会経済事情も踏まえて、忠実に政策決定までの流れを追っているので、机上の理論や理想論だけでは語れないことが感じられます。

人間模様やインタビューがたくさん盛り込まれているドキュメンタリー本なので、1つの小説のように読みふけってしまうおすすめの一冊です。

この本を読んだ理由

コロナ前から投資を始めましたが、コロナ禍で日経平均がアメリカ経済に大きく影響しながら動くことを体感しました。

具体的には、FRBの金融政策の決定会合を受けて、日経平均が大きく動くのを目の当たりにして、FRBについて学びたいと思ったのがきっかけです。

ちょうどコロナ禍の前後のFRBの動きをまとめた本書を見つけたので、手に取って読んでみました。

本を読んだ感想・考察

ゼロ金利政策解除から利上げのストーリーがわかりやすい

2022年3月のゼロ金利政策解除から、幾多に渡るスピーディーな利上げ政策までの過程がとてもわかりやすくまとめられているなと思いました。

私は、アメリカ経済政策についてほとんど初心者で、ニュースレベルの知識しかないのですが、ニュースで得た情報の点と点が線に繋がっていく感覚がありました。

表面的な情報がどんどん楽しくストーリーに繋がっていくので、さくさく読み進められました。

金融理論以外の人間模様が面白い

金融政策や経済政策を論評する際に、「〇〇の政策は、あの経済状況のなかでは××の理由から不適切だった。だからデフレになったのだ…」と言った、後付けのように結果論で批評することがよくあります。

経済批評は、過去の経済動向を振り返って理屈付け・理論付けをするのがセオリーなので仕方ないのですが、後からあれこれ言うのは簡単ですよね。

しかし、実際の経済政策は、まさにその場で起きていることに対処するために試行錯誤して対策を講じます。

この本では、市場のインフレによる生活財の物価上昇で混乱する様子を伝えつつ、それに対してパウエルがどう動くのか、ホワイトハウスの対応、当時野党の共和党との対立などを細かく臨場感たっぷりに記述しているのが印象的でした。

SVBの破綻まで描く

急速な利上げは、SVB(シリコンバレーバンク)の破綻を招きました。

本書では、SVBの破綻は、ゼロ金利政策解除の遅さと急速な利上げが原因であるという考えを示しています。

つまり、タイトルの「迷走の代償」というのが、ゼロ金利政策解除の遅さによって強いインフレを招いたことに加えて、さらに、その後の急速な利上げ対応によって金融機関の破綻まで招いたことを示しています。

FRBの政策決定によって招かれた市場の混乱について、実際に現場で見ている記者の視点から書いているのが独特だと感じました。

また、SVBの破綻に対して、ホワイトハウスとFRBがどのように対処しようとしたのかについても、当時のイエメン財務長官の思惑やインタビューなども引用しながら記載しているのが興味深いです。

パウエル長官の発言に注目

FRBは、アメリカの金融市場に大きな影響を与えると同時に、世界経済への影響も計り知れないのは言うまでもありません。

そして、その中でも、FRB議長の権限は大きく、その発言や一挙手一投足が注目されています。

世界は、議長の考えを知るために、議長の発言や言葉選びなどの細かな部分に注視して、議長の決定と金融政策の方向を探っています。

本書では、議長が公演やプレスを通じた市場への対話に際し、どういった言葉を使っているかに注目して、議長の考えの真相に触れている点がとても面白いです。

それは、著者が記者であるがゆえの、本書の特徴だなと感じます。

また、パウエル議長以外にもイエメン財務長官などの発言についても細かな分析を加えていてとても興味深いです。

最後に日本への提言が書かれている

本書では、自身が見たFRBの政策の動きを基に、日本の金融経済政策への提言で本書を〆ています。

筆者は、「日本経済新聞ワシントン支局主席特派員」なので、最後は日本にベクトルを向けているのが印象的です。

筆者は、日本は、長きにわたる物価低迷に陥っていて、その状態にマヒしてしまっていることから、目立った経済ショックに見舞われたときに対応できないのではないかと危惧しています。

FRBの教訓から、国内で経済危機に備えた議論をすることや、そもそも有事の際に、平和ボケせずに、それが「有事である」と認識するアンテナを張ることが大切だと述べているのが印象的でした。

おすすめな人

この本は、

  • 経済政策決定のドラマを感じつつ、経済理論を学びたい人

におすすめです。

この本の最大の特徴は、FRBの政策決定の史実を記者の目線で追っているので、ドラマチックな各々の画策や葛藤を感じつつ、金融の実践的な知識や金融理論の解説も学べる点です。

金融理論の教科書でありながら、パウエル議長を中心としたFRBとホワイトハウスを舞台とした経済政策決定のドラマも観れるような、ちょうどいい塩梅の本だと思いました。

ドキュメンタリーが好きな方には特におすすめです。

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最後に

FRBは、物価の安定と雇用の最大化を使命にしています。

一方、わが国の日銀は、物価の安定と金融システムの安定です。

FRBは、日銀と異なり、雇用の最大化を使命の1つに掲げているのが特徴です。

アメリカにおいて雇用統計が最も注目される指標の1つであるのは、FRBが雇用の最大化を使命にしているからであり、雇用統計がFRBの金融政策に大きな影響を与えるからです。

本書を読むと、人々の生活とFRBの政策決定がとても密接に関連していることが感じられます。

それは、物価と雇用という、私たちの生活の根幹をなすものをFRBが担っているからなのかもしれません。

この本では、FRBが政策決定に迷走する様子が書かれていますが、「迷走」だとしても、それだけ人々の生活に影響を与える政策であり、人々の関心が高いからこそ、国民に注目されている点が我が国とは異なると感じました。

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