国債とは?
国債とは、国が発行する債券のことです。
- 資金を借りる際に発行される有価証券のこと
債券という言葉に馴染みがない方もいると思いますが、債券とはいわゆる借用証書のことです。お金を貸してくれた人(=債権者)に対して、国がお金を借りていることの証明書として交付されます。
そして、借金なので当然、満期がきたら元本が償還されます。
国債の特徴
国債の主な特徴について説明します。株式などの証券と混同しないように注意しましょう。
満期保有で元本が償還される
1つ目は、満期まで所有すると元本が償還される点です。
国債は借金なので、満期が来たら元本が償還されます。家のローンを借りる時も元本に利子を付けて返済しますよね。債券も借金なので同じ仕組みです。
他の投資商品と違い、債権者である国がデフォルト(債務不履行)しない限り元本は償還されます。
- 国が財政悪化などにより債券の元本や利子を償還期日までに返せなくなること
国債を償還するときの元本と利子の財源は税金なので、税収入で債券を償還できなくなった場合にデフォルトします。
つまり、国債は債務不履行が最大のリスクなので、各国の債券の信用力を測るために債券の格付けが行われます。
- 債券の信用力を測るため、格付け機関が債務不履行のリスクを指標化したもの(AAA~D)
国債発行時に設定された金利が受け取れる
2つ目は、国債発行時に設定された金利が受け取れる点です。
国債は、国が投資家にお金を借金することなので、投資家は金利を受け取ることができます。
金利は国債ごとに発行時に決められ、半年ごとに金利が支払われます。また、国債によっては、支払い相当の金利分が割引された価格で購入でき、満期時に額面価格が支払われるものもあります(=割引国債)
法律に基づいて発行される
3つ目は、国債は法律に基づいて発行される点です。
国債は借金なので、政府は無尽蔵に国債を発行できません。法律に基づいてのみ発行できます。
法律は国民の代表である国会で審議されて制定されるので、国民の総意をもって国債が発行されるという仕組みになっています。
注意しなければいけないのは、国債の発行は基本的に法律で禁止されています。
第四条 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。
財政法(昭和22年法律第34号)
国は、借金以外の方法で財源を確保しなければならないと法律で明記されています(財政法第4条)。しかし、例外として、公共事業費・出資金・貸付金の3つに限っては国会の議決を経た上で国債で賄うことができます(財政法第4条但し書き)。
では、公共事業費・出資金・貸付金以外の用途で財源が不足した場合にはどうするのでしょうか。
これらの用途以外で財源が不足した場合には、特例法という法律を制定し、その法律に基づいて国債を発行します。例えば、毎年度の予算を決める時期になると、財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律という特例法が制定され、その年の国債の発行額が決定されます。
- 一般法の例外や特定の事項について制定される法律
- 特例法は一般法よりも優先される
- 特例法は適用期間を定めているものが多い
財政法では3つの用途以外での国債の発行が禁止されているのに、特例法では認められているのは、「特例法は一般法よりも優先される」という性質によるものです。
国債に関する特例法も、一定の期間にのみ効力があり、一般法である財政法よりも優先して適用されます。したがって、国債の特例法は毎年度制定され、3つの用途以外の用途でも国債を発行できるようなっています。
国債の購入者は原則投資家である
4つ目は、日銀は国から国債を買わないという点です。
原則として、国債を購入するのは投資家だけです。
日銀が直接国から国債を購入することは法律で禁止されています(=市中消化の原則)。
第五条 すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。
財政法(昭和22年法律第34号)
中央銀行である日銀が国債を国から引き受けて政府へ資金を提供し始めると、
- 政府の財政コントロールが悪くなる
- 市中の資金流通量が増えてインフレーションが起こる
というリスクがあるので、世界各国でも禁止されています。
しかし、例外として日銀が国債を引き受ける場合(=日銀乗換)もあります(後述します)。
国債の種類①(発行目的別)
国債は、発行目的によって種類が異なります。その発行目的に応じて、発行根拠となる法律も異なります。
国債の種類 | 目的 | 根拠法 | |
普通国債 | 建設国債 | 公共事業・出資金・貸付金の財源の調達のため | 財政法 |
特例国債 (赤字国債) | 公共事業・出資金・貸付金以外の財源を調達するため | 特別法 | |
復興債 | 東日本大震災からの復興のための施策を実施するため | 特別法 | |
借換債 | 普通国債の償還額の一部を借換える資金を調達するため | 特別会計に関する法律 | |
財政投融資特別会計国債 | 財政融資資金の運用財源に充てるため | 特別会計に関する法律 | |
繰延債 | 出資金や弔慰金など金銭の給付に代えて発行するため | 特別法 | |
融通債 | 国庫の日々の資金繰りを調整するため | 財政法など |
国債は目的別に分けると、普通国債・財政投融資特別会計国債・繰延債・融通債の4種類あります。
さらに、普通国債は政府の歳出を賄うために発行される国債のことで、建設国債・特例国債・復興債・借換債の4種類に分かれます。
建設国債
建設国債とは、財政法第4条第1項のただし書きに基づいて発行される国債で、公共事業費・出資金及び貸付金の財源として発行されます。
特例国債(赤字国債)
公共事業費以外の歳出に充てる資金を調達するために、特別法を制定して国会の議決を経た金額の範囲で発行される国債です。
復興債
復興債は、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法に基づき、東日本大震災の復興財源として発行している国債のことです。各年度の予算で国会の議決を経た金額の範囲内で発行され、復興債の償還には復興特別税の収入等が充てられています。
借換債
借換債とは、過去に発行した国債の元本や利子を償還するために発行する国債のことで、借換債を発行しないと国債を償還できないのでデフォルトになってしまします。
財政投融資特別会計国債
財政投融資特別会計国債は、財政投融資の資金のために発行する国債のことです。
- 公共性の高い事業のうちリスクが高くて民間では対応が厳しいものについて国が融資・投資をすること
普通国債は償還時の財源が税金なのに対して、財政投融資特別会計国債は財政投融資の財源なので、償還する際の財源は融資先からの回収金です。
繰延債
繰延債は、戦没者の遺族や国際機関への出資金などのために、金銭で給付する代わりに発行される国債のことです。戦没者の遺族などに弔慰金として現金給付をするのではなく、国債を発行することで、遺族はいつでも金融機関で国債の償還を受けることができます。
特に、国際機関への出資金は非常に高額になるので、単年度に一度に支出すると政府の急激な財政悪化につながりますが、繰延債を発行すると、支出を将来に繰越できるので支出を平準化するメリットがあります。
繰延債は、国債を交付した相手が償還した際に相手に直接資金が交付される点で普通国債と異なります。普通国債は、国債を発行して購入されると政府に収入金が入りますが、繰延債は政府に収入金が入らず国債を購入した人に直接入ります。
融通債
融通債は、政府の資金の受入と支払のタイミングのずれで発生する一時的な現金不足を補うために発行される国債のことです。
国債の種類②(利払目的)
国債は、利子の支払い方式による分類分けもできます。
種類 | 特徴 |
利付国債 | 半年ごとに利子が支払われて満期時に元金が償還されるもの |
割引国債 | 利子の支払いがなく、償還期限までの利子相当分を額面金額から差し引かれた価格で発行され、満期時に額面金額で償還されるもの |
利付国債と割引国債で発行されている国債の種類は次の通りです。
利付国債
利付国債とは、償還期限の満期までの半年ごとに、発行時に設定された利率が支払われ、満期時に額面金額で元本が償還される国債のことです。
現在、利付国債には、主に満期までの償還期限ごとに商品が分かれ、中期国債(2年・5年)・長期国債(10年)・超長期国債(20年・30年・40年)・個人向け国債(固定3年・固定5年・変動10年)・物価連動国債の商品が用意されています。
利付国債のポイントは、次の点です。
- 個人向け国債のみ債券市場で取引されない(財務省が直接買い取る)
個人向け国債以外の商品はすべて債券市場で取引されるのでいつでも自由に売買ができます。
しかし、個人向け国債は、譲渡制限があるので個人間か国(財務省)への譲渡しか認められておらず、債券市場での取引はできません。
割引国債
割引国債とは、償還期限の満期時までに利子は支払われず、満期時に額面金額で償還される国債のことです。
現在は、国庫短期証券という商品が割引国債として発行されていますが、購入できるのは金融機関などの機関投資家に限定されています。
国債が発行される仕組み
国債は、法律に基づいて発行されて金融機関や個人投資家が購入します。
国債の発行方式は3種類あります。
市中発行方式
市中発行方式とは、市中金融機関などに公募入札等で発行される国債のことです。
- 入札参加者による価格競争入札によって発行条件を決定しする方法
- 利付国債(2年・5年・10年・15年・20年・30年・40年)と割引短期国債(6か月・1年)が公募入札で発行されている
公募入札は、財務省が提示した発行条件に対して、金融機関などの入札参加者が落札希望価格と額を入札して発行価格と発行額が決定される方式です。
なお、入札に参加できるのは、国債の発行等に関する省令に基づいて定められた金融機関などに限られており、個人が参加することはできません。
金融機関は、落札した国債を自身で運用するほか、独自に価格を設定して投資家に販売します。
国会で当該年度の国債発行総額が議決されると、財務省が発行予定日等を公表します。財務省は、日銀に入札に必要な事項を通知して、日銀が入札のオファーや取りまとめなどの事務を行います。
日銀の国債に関する具体的な事務について知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
参考記事 【解説】日銀の国債に関する事務について
個人向け発行方式
個人向け発行方式とは、個人投資家向けに販売される国債のことです。
個人向け発行方式は、証券会社や銀行等の金融機関で、個人投資家向けに募集されて発行されています。金融機関は、国から委託を受けて個人投資家に対して国債を販売している仕組みです。
個人向け発行方式は、個人向け国債と新型窓口販売方式国債の2種類があり、それぞれの国債で償還期限や金利の種類で3種類ずつの商品が用意されています。
- 個人向け国債...変動10・固定5・固定3
- 新型窓口販売方式国債...国債10・国債5・国債2
個人向け国債と新型窓口販売国債の大きな違いは、元本保証・最低金利保証・金利タイプの3点です。
- 元本保証…個人向け国債は元本保証がある
- 最低金利保証…個人向け国債は0.05の下限金利がある
- 金利タイプ…個人向け国債には変動金利の商品がある
これらの違いを中心に2つの国債について説明します。
個人向け国債
個人向け国債は、個人投資家が購入しやすいように次の5つの特徴があります。個人の国債保有を促進するため、国が個人投資家だけに付与したメリットです。
- 元本割れのリスクなし
- 購入1年後から中途換金可能
- 0.05%の最低金利保証
- 1万円から購入可能
- 毎月発行される
個人向け国債の最大の特徴として、元本保証と最低金利保証の2つの保証があります。
個人向け国債は、購入1年後であれば購入時の額面価格で売却できるので、中途換金しても元本割れするリスクがありません。
個人向け国債は債券市場で売買できません。
個人向け国債以外の国債は、債券市場で取引できるので売却益を狙えますが、逆に売却損が生じて元本割れするリスクがあります。
個人向け国債を償還前に売却するには個人間での譲渡か国(財務省)に買い戻してもらうかのどちらかになりますが、国に中途換金をする場合には財務省が元本での買取を保証しています。
つまり、個人向け国債は債券市場で売買できない代わりに、財務省が元本価格で中途換金を保証しているので、元本割れの心配がありません。
また、個人向け国債は、最低金利0.05%が保証されています。
近年、国債の金利がマイナス金利になっており、国債を購入しても金利分の利益が出ずむしろ損失になる状態が続いています。
しかし、個人向け国債であれば採点金利が0.05%に保証されているので、マイナス金利になって金利の損失が出る心配がありません。
また、個人向け国債は毎月発行されて1万円から購入可能なので、毎月コツコツ無理なく積み立てて投資をすることができます。個人投資家を対象としているので、少額で購入しやすい商品設計が特徴です。
個人向け国債には次の3種類の商品があります。
特に注目すべきは、変動10という唯一の変動金利商品です。
変動金利商品であれば、金利上昇の恩恵による金利収入を得られます。
変動金利商品のリスクとして債券価格の下落がありますが、個人向け国債の場合は元本割れのリスクがないので債券価格の下落の心配はありません。
- 金利が上昇すると新しく発行される債券の需要が高まり、すでに発行された低い金利の債券の需要が下がることから、すでに発行された債券価格が下落する
新型窓口販売国債
新型窓口販売国債とは、一般の利付国債を民間の金融機関で購入できる方法です。
新型窓口販売国債の特徴は次の2つです。
- いつでも債券市場で売却できる
- 個人・法人問わず購入できる
個人向け国債は、元本割れのリスクがないというメリットがありましたが、債券市場で売却できないので、元本価格でしか売れないため売却益を得られません。
一方、新型窓口販売国債は一般の利付国債と同様に、債券市場でいつでも売却できるので売却益を狙うことができるため自由度が高い国債です。
新型窓口販売国債には、償還時期ごとに3種類の商品が用意されています。
金利は財務省が設定するため、金利と償還期限によって商品を選択します。
公的部門発行方式
公的部門発行方式とは、いわゆる日銀乗換のことです。
日本銀行が債券市場から購入した国債が満期を迎えるときに、国に対して現金での償還を求める代わりに、その国債の一部を借換債として引き受けること
日銀は国から直接国債を購入することはできませんが、例外として、満期がきた国債を借換債という新しい国債に借り換えることができます。
日銀がすでに持っている国債が消化され、借換債が新しく発行されて日銀が保有するので、公的部門発行方式と言います。
日銀乗換については、こちらの記事で詳しく説明しているので参考にしてください。
参考記事【解説】日銀の国債に関する事務について