適応障害で療養して退職した方は、傷病手当金と失業保険の申請を考えると思います。
- 適応障害で療養中に退職した場合には失業手当(雇用保険・失業保険)はどうなるの?
- そもそも傷病手当金と失業手当の違いって何?
- 傷病手当金と失業手当を両方活用するにはどうしたらいいの?
今回は、適応障害で退職した方が、傷病手当金と失業手当の両方の制度をできる限り活用する方法をわかりやすく説明します。
適応障害で退職して失業手当を受給できない場合には、失業手当の受給時期を延長できます。
失業手当の延長制度を利用すれば、
- 療養中は傷病手当金を受給する
- 療養後は失業手当を受給する
ことができるので、傷病手当金と失業手当の両方を活用してお金の心配を減らせます。
少しでも不安や心配を軽減して早く病気から回復するためにも、活用できる制度はしっかりと活用したいですよね。
しかし、体調が辛いのに様々な制度をゼロから調べたり勉強するのは非常にしんどいと思います。
この記事を読めば、
- 失業手当の受給資格期間を延長する方法
- 傷病手当金と失業手当の両方の制度をうまく活用する方法
が分かります。
傷病手当金と失業手当の違い
傷病手当金と失業手当は、全く異なる制度です。
「失業手当・失業保険」とは、日常生活で我々が分かりやすく使っている名称であって、本来の正式名称は、雇用保険(基本手当※)と言います。
この記事では、わかりやすいように失業手当と記載します。
※雇用保険には、基本手当以外にも様々な手当があるので「雇用保険(基本手当)」という記載になっています。
傷病手当金 | 失業手当 | |
対象者 | 病気やケガで療養する必要があって就労できない人 | いつでも就職できる状態にあるが失業状態にある人 |
受給資格期間 | 療養中はいつでも可能 | 退職日の翌日以降の1年間 |
所定給付日数 | 支給開始日から通算で1年6か月 | 退職理由や年齢によって違う 詳細はこちら |
支給額 | 給与の6割が目安 | |
支給要件 | 業務外の怪我 病気により就労不能 給与の支払いがない 4日以上休んでいる | 失業状態にある 雇用保険の加入期間を満たす 求職の申込をしている |
傷病手当金と失業手当の大きな違いは、就労できる状態にあるかどうかです。
したがって、傷病手当金と失業手当を同時に受給することはできないので注意が必要です。
- 傷病手当金と失業手当は同時に受け取れない
- 退職(失業)しても、療養中の場合には失業手当は受け取れない
傷病手当金と失業手当の両方を活用する方法
傷病手当金と失業手当は支給対象者が異なります。
したがって、退職後もそれぞれを最大限活用して受給するには、
の順に申請するのがポイントです。
それぞれについて詳しく説明します。
傷病手当金は退職前に受給を開始する
退職後も傷病手当金を受給するためには、退職前に傷病手当金の受給を開始する必要があります。
傷病手当金は、就労が難しくて休職する場合に健康保険組合から支給される給付金です。
しかし、健康保険組合から脱退した退職後も引き続き療養が必要な場合には、退職後も傷病手当金を受け取れます。
つまり、傷病手当金の支給期間の1年6か月の間に退職してしまっても残りの分を退職後に受け取れるということです。
退職後も傷病手当金を受け取るための条件は次の3つです。
傷病手当金を受給する前に退職してしまうと、退職後に引き続き療養が必要であったとしても新たに傷病手当金を申請できません。
また、退職前に傷病手当金を受給していたとしても、退職日に出勤しないように注意しましょう。退職日に出勤すると、「退職日以降に仕事ができる」と判断されて傷病手当金の支給が停止し、退職日以降の支払いがなくなるので注意しましょう。
退職してからすぐに転職などをせずに療養する可能性がある方は、必ず退職前に傷病手当金の受給を開始しておくこと・退職日に出勤しないことがポイントです。
(参考)傷病手当金を受給できる最短スケジュール
参考までに、傷病手当金を退職前に受給できるギリギリのスケジュールを紹介します。
傷病手当金の支給条件などについては、参考記事【徹底解説】傷病手当金の申請方法の記事で詳しく説明しています。
退職前に3日間の休暇(有給休暇・公休・土日でも可能)を取得することと、その休暇が労働不能であることを証明するために、4日前以前に医師に診断書をもらう必要があります。
- 4日前医師の診断書をもらう
- 3日前~前日3日間の休暇(待期期間)を過ごす
※ 有給休暇・土日祝日等の公休日も含む - 退職日退職日は出勤しない
しかし、制度上はこのスケジュールで可能ですが、最終的に受給決定を下すのは健康保険組合なので、休職期間を十分に確保して傷病手当金を受給してから退職すると安心です。
退職後に失業手当の受給期間の延長を申請する
退職後に傷病手当金を引き続き受給する場合には、失業手当の受給期間の延長をしておきましょう。
- 退職後に療養の必要があって失業手当をすぐに受け取れない場合には、受給期間の延長手続きを取ること
適応障害の療養中に失業手当の受給期間が喪失してしまうことを防ぐために、受給期間の延長手続きが非常に重要です。
受給期間の延長方法については、次の項目で説明します。
失業手当の受給期間内に受給を開始する
療養が終わって就職できる状態になったら、失業手当の受給を開始しましょう。
療養中に傷病手当金を受給して、その後に失業保険を受給すれば、傷病手当金と失業保険の両方を十分に活用できます。
失業手当の受給資格期間の延長とは?
失業手当には受給資格期間がある
失業手当には、受給期間の制限があります。
1年の受給資格期間の間に所定給付日数(=自分が失業保険をもらえる日数)を消化できなかった場合には、消化できなかった日数分の失業手当をもらうことはできません。
つまり、退職後1年間を超えると受給資格を失うので、未支給の失業手当が残ってしまったとしてもその未支給分をもらえません。
特に、傷病手当金と失業手当は同時に受けられないので、
- 療養中に傷病手当金を受け取る
- 退職する
- 退職後も療養中は傷病手当金を受け取る
- 療養後(又は傷病手当金の支給満了後)に失業手当を受け取る
という流れで受給する方が多いと思いますが、退職後ならいつでも失業手当を受給できるわけではないので注意しましょう。
受給資格期間の延長制度
退職後に療養などの正当な理由があって就職できる環境になく、退職後1年間の受給資格期間内に失業手当を受給することができない場合もあります。
そのような方への救済措置として、
が設けられています。
この延長制度を利用すれば、受給期間が退職日の翌日から最大4年間(既存の1年分+延長最大3年分)に変更されます。
(例)退職日の翌日から6か月の療養が必要で失業手当の受給ができなかった場合には、受給期間は退職日の翌日から1年6か月後の日(1年+6か月)まで延長される。
失業手当の受給期間を延長するには延長手続きが必要なので注意しましょう。
適応障害で退職後も療養する人は注意
特に、退職後も適応障害の療養が必要な人が、就労できる程度に回復するまでに退職してから1年以上かかった場合には、1年間で失業手当の受給資格を失ってしまいます。
たとえ退職して1年後に病気から回復して就職活動ができるようになったとしても、失業手当の延長手続きをしていなければ受給できないので注意してください。
延長手続きをすれば、適応障害が治って就職できる環境が整った後に失業手当を受給できるようになります。
なお、失業手当を延長する方は教育訓練給付制度の延長手続きも同時にすることがおすすめです。
教育訓練給付制度の延長については、参考記事 教育訓練給付金を退職後も活用する方法の記事で説明しているので参考にしてください。
失業手当を延長する方法
失業手当の受給資格開始日を延長するには、ハローワークへの延長申請が必要です。
- STEP①退職日の翌日から30日間が経過した後から申請可能
- STEP②必要書類を揃えてハローワークに行く(郵送でも可能)
- STEP③後日、受給期間延長決定通知書が自宅に届く
受給期間の延長を申請できる条件が、
- 病気などのやむを得ない理由で
- 本来の受給期間内(1年間)ですぐに働くことができない状態が30日以上続く
場合なので、この条件を満たすための手続きが用意されています。
申請自体はあっさりとしていて簡単なので、注意点やポイントを絞って説明します。
延長申請のタイミングと申請期限
失業手当の受給資格期間の延長申請は、退職日の翌日から30日後からできます。
「すぐに働くことができない状態が30日以上続く」ことを疎明するために、退職日から30日以上空けてからしか延長申請ができないようになっています。
例えば、4/15に退職した場合は、5/16から申請可能です。
- 退職日:4/15
- 退職日の翌日:4/16
- 退職日の翌日の30日後:5/16
また、延長申請は、延長した受給期間の最後の日(適応障害で延長した場合には退職日の翌日から4年後)まで可能です。
4年間の間にいつ延長を申請しても受給期間は退職日の翌日から4年間であることには変わりませんが、申請を忘れないためにも早く申請しておくことをおすすめします。
受給期間の延長の申請に必要なもの
延長申請に必要なものは、次のとおりです。
- 受給期間延長申請書
- 離職票2(退職後に会社から送付される)
- 延長理由を証明する書類
受給期間延長申請書
受給期間延長申請書は、ハローワークで交付されますので自分で用意する必要はありません。
ハローワークの窓口で直接申請する場合にはハローワークで入手し、郵送で提出する場合にはハローワークに電話して書類の郵送を依頼します。
申請書を記載するときによく迷ったりわからなくなる点をまとめておきます。
番号 | 記入項目 | 記入方法 |
---|---|---|
3 | 被保険者番号 | 離職票2に記載されている番号を転記する |
4 | 支給番号 | 記入不要 (失業手当の受給を申請したら交付される) |
5 | 申請提出理由 | 「イ疾病により職業に就くことができないため」を選択 |
6 | 職業に就くことができない期間 | 働くことができない期間を記入 目途が立っていない場合には、空欄でも可 |
7 | 疾病の名称・診療担当者 | 延長理由を証明する書類に沿って記入 |
離職票2
離職票は退職した会社から交付される書類ですが、延長手続には離職票2のみが必要です。離職票1は療養期間が終わって、就職できる状態になって失業手当の受給を開始する際に必要になるので、自宅でなくさずに保管しておきましょう。
延長理由を証明する書類
延長理由を証明する書類は、適応障害で療養のために就労ができない状態にあることを示すものです。
必要な書類は、管轄のハローワークによりますが、
- 医師の診断書
- 通院証明書
- 傷病手当金申請書の医師記入欄
のどれかを用意する必要があります。
傷病手当金を支給されている場合には、傷病手当金申請書の医師記入欄の提示で十分なケースもあり、一番スムーズで追加の費用がかからないのでおすすめです。私は傷病手当金申請書で証明できたので、書類を改めて取得する必要がなくて楽でした。
一度管轄のハローワークに確認してみましょう。
申請書類の提出方法
延長手続きの申請書類を提出する方法は、3つあります。
いずれの方法も、提出先は自分が管轄するハローワークです。
- 本人がハローワークに来所する
- 代理人がハローワークに来所する
- 書類を一式ハローワークに郵送する
本人又は代理人がハローワークに来所する場合
延長手続きは、管轄のハローワークに来所して行うことができます。
また、本人が来所できない場合には、代理人が来所して申請することも可能です。
その場合には、委任状が必要になりますので、管轄のハローワークのホームページから委任状をダウンロードして持参しましょう。
郵送で書類を提出する場合
適応障害の療養や体調がすぐれなくて来所が難しい方は、郵送で延長手続きを済ませられます。
郵送で手続きを行う場合には、次のような流れで行います。
- STEP①管轄のハローワークに電話をして受給期間延長申請書の郵送を依頼する
- STEP②自宅に書類が郵送される
- STEP③受給期間延長申請書を記入して、他の必要書類と合わせてハローワークに返送する
- STEP④後日、延長決定通知書が送付される
なお、管轄のハローワークに電話をする際には、「雇用保険の失業給付の受給期間の延長業務を行っている雇用保険給付窓口」を指定すればすぐに繋いでくれます。
就業可能になった際の失業手当の受給手続の方法
適応障害の症状が落ち着いて働ける状態になったら、失業手当の受給期間の延長を解除して失業手当の受給を開始します。
受給期間満了日ギリギリに受給を開始しても、所定給付日数をすべて消化できないで受給期間の期限が来てしまうかもしれないので、就労できると医師に判断されたらなるべく早く受給を開始することがおすすめです。
失業手当の受給を開始する際の流れを簡単に把握しておくと安心だと思うので、要点を絞って説明します。
就労できる状態になったらハローワークに来所して失業手当の受給の申請を行います。
延長手続きをした方が受給申請をする際に必要な持ち物は次のとおりです。
- 離職票1と2
- 写真(縦3cm×横4cm)×2枚
- 本人名義の通帳
- 本人確認書類(運転免許証・パスポート・保険証など)
- マイナンバー確認書類
- 受給期間延長通知書
- 就労可否証明書
受給期間延長通知書と就労可否証明書は、延長手続きをした際に交付されます。
- 療養を終えて就労できる状態にあることを医師に証明してもらうもの
- 主治医の先生に記載してもらってハローワークに提出する
延長の解除は、適応障害が回復して就業できると医師に判断してもらわなければ受給を開始できませんので、主治医に就労可否証明書を記載してもらいます。
延長手続きをした方が受給申請をする際の流れは、通常の失業受給手続きと基本的には同じです。
失業手当の受給申請の方法を詳しく知りたい方は、参考記事【完全版】失業手当の受給方法と注意点の記事を参考にしてください。
失業手当の延長手続きと傷病手当金を活用する際の注意点
失業手当の延長手続と傷病手当金を活用する際の注意点が3点あります。
自分で申請しないと延長されない
1点目は、自分で申請しないと受給期間が延長されないことです。
退職後に、療養中などのやむを得ない事情があって求職活動ができなかったとしても、受給期間の延長手続きをしなければ受給期限は切れてしまいます。
役所や企業が催促してくれるわけではないので、退職後に療養する必要がある方は必ず忘れずに延長申請をしましょう。
傷病手当金は退職前に受給開始する
2点目は、退職後に傷病手当金を受給する場合には退職前に受給を開始することです。
適応障害の療養が必要なまま退職した場合には、退職後も傷病手当金の受給が可能になりますが、退職前に受給していることが条件です。
退職日前に最低3日間の休暇があればスケジュール的には問題ないですが、余裕をもって受給を開始しておくと安心です。
自分で申請が難しい場合にはプロにお願いする
傷病手当金や失業手当を十分に活用して、できる限り必要なだけ多くもらうには、傷病手当金の申請・退職手続き・失業手当の延長申請・失業手当の申請…と多くの手続きを確実に行う必要があります。
体調が悪く療養する必要があるのに、スケジュール通りに書類を揃えて役所に申請するのは心身ともに辛くて大変です。
そのようなときは、無理せずにプロにサポートを依頼しましょう。
体調を崩す前に誰かに頼ることは、早く回復してストレスを軽減するためにとても大切です。
例えば、退職コンシェルジュなら、休職中の傷病手当金の申請から退職手続き、退職後の始業手当の受給まで一貫してサポートしてくれるので、手続きが漏れることなく確実に手当を受給できます。
退職コンシェルジュの詳しい内容を知りたい方は、参考記事【徹底検証】退職コンシェルジュのサービス内容とおすすめな人の記事を参考にしてください。