日本銀行と民間銀行の違いは何か?
と聞かれると、意外と回答するのに苦労しませんか?
日本には様々な金融機関が存在しますが、大きく3種類(日本銀行・民間金融機関・公的金融機関)に分類されます。
各金融機関はそれぞれの目的や役割を担っており、特に日本銀行と他の一般銀行は役割が全く異なっています。
今回は、日本銀行と民間銀行の役割の違いを本質的にわかりやすく説明したいと思います。
日本の金融機関の種類
日本の金融機関は、中央銀行(日本銀行)・民間金融機関・公的金融機関の大きく3つに分類されます。
我が国の中央銀行は言わずもがな日本銀行ですが、民間金融機関や公的金融機関は次のような銀行のことです。
普通銀行・信託銀行・信用金庫・信用組合・労働金庫・証券会社・保険会社・ノンバンクなどの民間資本によって運営されるもの
日本政策投資銀行・国際協力銀行・日本政策金融公庫・商工組合中央金庫など公共目標を達成するための政府系金融機関のこと
銀行と言っても様々な金融機関が存在しますが、私たちの身近にある銀行(三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行など)は普通銀行です。
今回は、日本銀行と普通銀行の違いを説明したいと思います。
各金融機関は法律に基づいている
各金融機関の根拠法
日本銀行・民間金融機関・公的金融機関は、すべて根拠法に基づいて設立しています。
各金融機関の設立目的・業務内容などを規定した法律
つまり、誰もが勝手に金融機関を名乗って設立できるのではなく、法律の規定に基いて許可を得た機関だけが金融機関を運営できるということです。銀行業務は、お金に関わることで公共性が高いので法律で規制されています。
したがって、各金融機関の特徴を把握するには根拠法を参照するのがポイントです。
参考までに、各金融機関の根拠法を一部紹介します。
金融機関 | 根拠法 |
日本銀行 | 日本銀行法 |
普通銀行 | 銀行法 |
信用金庫 | 信用金庫法 |
信用組合 | 中小企業等協同組合法 協同組合による金融事業に関する法律 |
信託銀行 | 金融機関の信託業務の兼営等に関する法律 |
労働金庫 | 労働金庫法 |
日本政策投資銀行 | 株式会社日本政策投資銀行法 |
金融機関は業務が限定されている
各金融機関は、それぞれの根拠法に基づいて業務を行います。
根拠法には、
- 各金融機関が行える業務範囲が細かく明記されている
- それ以外の業務の実施を禁止する旨明記されている(=他業禁止)
という特徴があります。
つまり、金融機関は法律で明記されている業務以上のものを行えないということです。
日本銀行と普通銀行の違い
日本銀行も普通銀行も金融機関であることは共通しています。したがって、行っている業務の種類は、預金受入・貸付・国債売買・為替取引など共通しているものが多いです。
しかし、日本銀行と普通銀行は業務の目的が全く異なるので、同じ種類の業務でも内容が全く異なります。
例えば、貸付や国債売買は両者で行われている業務ですが、内容は全く異なります。
- 日本銀行:一時的に資金不足に陥った金融機関に対して貸付を行い金融システムの安定を図る
- 普通銀行:企業や個人への貸付によって金利収入を図る
- 日本銀行:金融機関に国債を売買することで市中のお金の流通量を調節して物価の安定を図る
- 普通銀行:個人への国債売買による手数料収入を図る
普通銀行はその業務サービスの提供による収益を得るのが目的であるのに対して、日本銀行は業務という手段を用いて物価安定・金融システムの安定を達成するのが目的です。
日本銀行と普通銀行の特色を詳しく説明します。
日本銀行とは?
日本銀行の目的
日本銀行の目的は、日本銀行法第1条に規定されています。
日本銀行の目的は、次の2点であるとはっきり明記されています。
(目的)
第一条 日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
2 日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。(通貨及び金融の調節の理念)
日本銀行法(平成9年法律第89号)
第二条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。
日本銀行の役割・業務
日本銀行の業務の特徴
日本銀行が行う業務は、日本銀行法の第4章に規定されており、規定された業務以外の業務を行うことは禁止されています。
日本銀行の業務・役割には大きな特徴があります。
日本銀行法に列挙されている業務のすべてに次の条件が付与されています。
- 第1条の目的を達成するため
- 中央銀行として
- 資金決済の円滑の確保を図るため
つまり、日本銀行の業務はすべて中央銀行としての役割(=物価安定・金融システムの安定)のために行うものであり、それ以外の目的のためには行ってはならないということです。
日本銀行は、銀行のための銀行・政府の銀行・発券銀行という3つの役割を持つと言われます。このように呼ばれるのは、まさに、金融機関間の資金決済の円滑の確保や中央銀行としての目的を果たすための業務を行っている銀行であるからです。
(通常業務)
第三十三条 日本銀行は、第一条の目的を達成するため、次に掲げる業務を行うことができる。
一 商業手形その他の手形の割引
二 手形、国債その他の有価証券又は電子記録債権を担保とする貸付け
三~八(略)(国に対する貸付け等)
第三十四条 日本銀行は、我が国の中央銀行として、前条第一項に規定する業務のほか、国との間で次に掲げる業務を行うことができる。(略)(国庫金の取扱い)
第三十五条 日本銀行は、我が国の中央銀行として、法令で定めるところにより、国庫金を取り扱わなければならない。(国の事務の取扱い)
第三十六条 日本銀行は、我が国の中央銀行として、法令で定めるところにより、通貨及び金融に関する国の事務を取り扱うものとする。(金融機関等に対する一時貸付け)
第三十七条 日本銀行は、(略)金融機関の間における資金決済の円滑の確保を図るために必要があると認めるときは、第三十三条第一項の規定にかかわらず、当該金融機関等に対し、(略)資金の貸付けを行うことができる。(資金決済の円滑に資するための業務)
第三十九条 日本銀行は、(略)金融機関の間における資金決済の円滑に資すると認められる業務を行うことができる。(国際金融業務)
日本銀行法(平成9年法律第89号)
第四十一条 日本銀行は、我が国の中央銀行としての外国中央銀行等又は国際機関との協力を図るため、これらの者との間で、次に掲げる業務を行うことができる。
(他業の禁止)
日本銀行法(平成9年法律第89号)
第四十三条 日本銀行は、この法律の規定により日本銀行の業務とされた業務以外の業務を行ってはならない。(略)
日本銀行の具体的な業務
日本銀行は、物価の安定や金融システムの安定といった中央銀行の目的を果たすために、次のような業務を行っています。
日本銀行が具体的に行っている業務について詳しく知りたい方は、参考記事【徹底開設】日本銀行の目的と役割についての記事を参考にしてください。
普通銀行とは?
普通銀行については、銀行法で規定されています。
(定義等)
日本銀行法(平成9年法律第89号)
第二条 この法律において「銀行」とは、第四条第一項の内閣総理大臣の免許を受けて銀行業を営む者をいう。
2 この法律において「銀行業」とは、次に掲げる行為のいずれかを行う営業をいう。
一 預金又は定期積金の受入れと資金の貸付け又は手形の割引とを併せ行うこと。
二 為替取引を行うこと。
普通銀行の目的
普通銀行は、銀行法で銀行業と規定されています。そして、銀行業とは様々な金融業務を行う営業であると定義されています。
つまり、普通銀行とは営利・利益を目的として様々な業務を行う銀行のことです。
普通銀行の役割・業務
普通銀行の業務は、固有業務・付随業務の2つの業務に分かれています。これらの業務は、銀行法に規定されており、それら以外の業務(=周辺業務)を行うことは禁止されています。
周辺業務は銀行で行えないので、関連会社や子会社に委託して行うのが慣例です。
固有業務
固有業務とは、普通銀行の本来業務のことです。
銀行法第2条第2項に規定されており、法律の上位の条項に位置しているので重要業務であることがわかります。
付随業務
付随業務とは、固有業務ではないが固有業務に関連があって、経営するために必要なため業務範囲に加えられたものです。つまり、あくまで付随なので、固有業務を超える規模になることは認められていません。
付随業務は、銀行法第10条第2項に列挙されており、第2条に規定されている固有業務とは一線を画しているのがわかります。時代の変化に伴って銀行に求められる役割やサービスが変化していくので、この条項に適宜付け加えられています。
【まとめ】日本銀行と普通銀行は役割が違う
日本銀行と普通銀行は、同じ金融機関ですが担っている役割が異なります。
日本銀行は我が国の社会経済や金融システムを安定させる役割を担っていますが、普通銀行は私たちが便利になるような金融サービスを提供する役割を担っています。
どちらも同じ金融サービスを扱っているのに、全く異なる目的を果たせるのは興味深いですよね。