適応障害を発症して退職した方は失業保険の申請を考えると思います。
- 失業保険って何?
- 失業保険の申請方法ってどうやるの?
しかし、失業保険を申請しようと思っても、制度内容や申請方法が分からないですよね。
今回は、適応障害で退職して転職しようとしている人向けに、失業保険を上手に賢く活用する方法を説明したいと思います。
職場で適応障害を発症して退職したら、生活費やお金のことが心配になりますよね。
退職後に転職活動をする間は給料が振り込まれずお金の不安があると思いますが、失業手当を受給すれば一定期間収入を確保することができます。
この記事を読めば、
- 適応障害の人が利用できる失業手当の受給方法・注意点・最大限活用する方法
が網羅的にわかるので、失業手当をスムーズに申請をして受給することができます。
転職を見据えた退職後のおすすめの過ごし方について知りたい方は、参考記事休職・退職後に転職に向けてできることの記事を参考にしてください。
失業手当とは?
失業保険とは一般的に使われている俗称であり、正式名称では雇用保険(基本手当)※と言います。
適応障害で退職した場合にも、条件を満たしている場合には失業保険を受給することができます。
※ 雇用保険には基本手当以外にも傷病手当など様々な手当があるので、「雇用保険(基本手当)」という言い方がされています。
失業保険の3つの受給条件
失業保険を受給するには、3つの条件を満たす必要があります。
これらの条件について詳しく説明します。
失業状態であること
1つ目は、失業状態にあることです。
失業状態とは、就職する意志や就職する能力があるにも関わらず就職できない状態を指します。
したがって、適応障害で退職した場合であっても、次のようなケースに該当すると就職する意志がある又は就職できない状態とは判断されず、失業保険を申請することができません。
- 学業に専念することになった
- 家事に専念することになった
- 退職後も適応障害の療養が引き続き必要である
- 次の就職先が決まっていて転職活動をする予定がない
特に、退職後も適応障害の療養が引き続き必要な場合は、失業保険を申請することができないので注意が必要です。
適応障害で療養中で働けないので生活費が不安なため支援をしてほしいという気持ちがあると思いますが、失業保険はあくまで働く意思・能力があるのに(労働需給の問題で)働けない人への支援制度なので、療養中の方は対象外になります。
療養を終えて就職できる状態になったら失業保険を申請できます。
退職後も適応障害の療養が必要で失業保険を受け取れない方は次の2つの申請をしましょう。
雇用保険の加入期間を満たしていること
2点目は、雇用保険の加入期間を満たしていることです。
失業手当とは、雇用保険の手当の1つです。
雇用保険とは、在職中に雇用主と労働者が折半して保険料を支払って加入しているもので、保険料を一定期間支払っていないと手当を受けられません。
なお、加入期間の条件は失業手当の対象者(退職理由によって区分したもの)ごとに異なります。
自己都合退職者 | 特定理由離職者 | 特定受給資格者 | |
---|---|---|---|
対象者 | 病気や転職などの自己都合による退職者 | 自分の意思に反する正当な理由による退職者 【例】特定の理由で通勤が困難になり離職した人 | 会社の倒産や解雇などの会社都合による退職者 【例】パワハラ |
雇用保険の条件 | 離職日以前2年間に雇用保険の被保険者期間※が通算して12か月以上ある | 離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あること | 離職日以前1年間に被保険者期間が通算して6か月以上あること |
自分がどの退職者区分に属しているかは、退職時に会社がハローワークに提出した書類に記載されており、ハローワークで確認できます。
退職区分によって給付日数や給付内容が異なるので、自分の退職区分を必ず確認しましょう。詳しくは、記事の後半部分で説明しています。
求職の申し込みをしていること
3点目は、ハローワークに求職の申し込みをしていることです。
就職する意志を示すために、ハローワークに行って求職の申し込みをします。
基本的にオンラインでの申請はできず、ハローワークの窓口に直接行く必要があるので注意してください。
求職の申込方法は、次の項目で説明します。
失業手当の受給の流れ
失業手当を受給するまでの流れは次のとおりです。
- STEP①ハローワークで求職と失業手当の受給申込みをする(受給資格決定日)
- STEP②7日間の待期期間を過ごす
- STEP③雇用保険説明会に出席して初回の失業認定日が定まる
- STEP④待機期間満了の翌日から2か月間の給付制限期間を過ごす
- STEP⑤毎月の失業認定日にハローワークに来所する
- STEP⑥来所した約1週間後に失業手当が給付される
それぞれの流れについて詳しく説明します。
ハローワークで求職と失業手当の受給申込をする
ハローワークで手続きをする際には、次の3つの手続きをして失業保険の受給資格の確認がなされた後、支給の決定がなされます。
- 求職の申込
- 離職票などの必要書類の提出
- 雇用保険説明会の予約
この求職の申込日を受給資格決定日と呼びます。
求職の申込に必要な持ち物
申込時に必要な持ち物は次のとおりです。
- 雇用保険被保険者離職票1と2(退職後に会社から送付される)
- 雇用保険被保険者証
- 本人確認書類(運転免許証・パスポート・マイナンバーカード・保険証など)
※マイナンバーカード以外の場合には個人番号確認書類が必要 - 写真(縦3cm×2.5cmの正面上半身)を2枚
- 本人名義の普通預金通帳
- 印鑑
- 求職申込書(ハローワークのHPから入手する)
就労可否証明書が必要な場合
次の場合には、申込時に就労可否証明書が必要な場合があります。
- 失業手当の受給期間の延長手続きの解除をする場合
- 特定理由離職者に変更する場合
就労可否証明書はハローワークで入手できます。
就労可否証明書を入手したら、主治医に記入してもらいます。
就労可否証明書が必要な方は、失業手当の受給期間の延長手続きの解除をする方と特定理由離職者に変更する方ですが、いずれも退職時に療養していた又は療養のために退職している方です。
つまり、失業手当を受給するために、
- 退職時点で就労が困難であった
- 現在は就労できること
を証明(=就労可否証明書)する必要があります。
就労可否証明書には、次の2点を明記してもらうようにしましょう。
7日間の待期期間を過ごす
ハローワークで求職と失業手当の申込をしたら、7日間の待期期間を過ごします。
- 失業状態であることを確認する期間
- すべての離職者に適用される
- 失業手当は受給できない
待機期間中は、失業手当の支給が遅れる可能性があるのでアルバイトや副業はなるべく避けるようにしましょう。
雇用保険者説明会への参加と失業認定手続き
雇用保険説明会に行くと、初回の失業認定日(受給資格決定日から約3週間後)が決まります。
失業認定日にハローワークに行って失業認定書を提出すると失業が認定されて失業手当が振り込まれます。
2か月の給付制限期間を過ごす(自己都合退職者のみ)
失業状態であることを確認したり、失業手当の乱用を防ぐために、自己都合退職者は7日間の待期期間に加えて2か月の給付制限期間が設けられます。
この給付制限期間の間も、毎月設定された失業認定日にハローワークに来所する必要がありますが、失業手当は支給されません。
しかし、特定理由離職者と特定受給資格者はこの2か月の給付制限期間が免除されるので、7日間の待期期間を過ぎたら約1週間後には失業手当が振り込まれます。
自己都合退職者 | 特定理由離職者 | 特定受給資格者 | |
---|---|---|---|
2か月の制限給付期間 | あり | なし | |
失業手当の初回振込日 | 受給資格決定日から約2か月半後 | 受給資格決定日から約3週間から約1か月以内 |
退職後は給与の振り込みがなくて生活費に不安があるので、2か月の給付制限期間が免除されるのは非常にメリットですよね。
適応障害による退職は、特定理由離職者に該当する場合が多いので、
- 失業手当の受給申込をした後の7日間の待期期間を過ぎたら、2か月の給付制限期間を経ずにすぐに手当を受給できる
ことがほとんどです。
このメリットを享受するためにも、自分の退職区分を管轄のハローワークに確認しましょう。
毎月の失業認定日で失業認定を受ける
失業認定日は4週間に1回の頻度で指定されます。
失業手当を受けるには、失業認定日にハローワークに来所してその日に失業の認定を受ける必要があります。失業手当は、失業認定日に来所して約1週間後に振り込まれます。
失業手当の受給期間と所定給付日数とは
失業手当の受給期間の期限は1年間
失業手当の受給期間とは、失業手当を受給できる(受給する資格がある)期間のことです。
失業手当の受給期間は、例外を除いて退職日の翌日から1年間です。
適応障害で退職後も療養する必要がある場合には、受給期間が退職日の翌日から4年間に延長されます(1に該当)。
失業手当の受給期間は退職日の翌日から1年間と期限が定められているため、これを超えると失業していても受給することができません。
しかし、退職後に療養などのやむを得ない理由で就職活動ができない場合には、受給期間を延長することができます。
退職後も適応障害の症状で療養する必要があり、失業手当を受給できない人は、忘れずに延長手続きをするようにしましょう。
- 失業手当を受給できる期間には期限(退職後1年間)がある
- 期限内に療養などの理由で受給できない場合には必ず延長申請を行うこと
延長手続きの方法を知りたい方は、参考記事失業手当の受給期間の延長方法についての記事を参考にしてください。
所定給付日数について
所定給付日数とは、失業手当を受け取れる日数の上限のことです。
つまり、失業手当の支給額は基本手当日額に給付日数をかけて算出されますが、この給付日数の上限額を所定給付日数といいます。
この所定給付日数は、離職理由・年齢・被保険者であった期間によって違います。
① 自己都合退職者
② 特定理由離職者・特定受給資格者
特定理由離職者と特定受給資格者は、自己都合退職者よりも受け取れる所定給付日数が多く、手厚い保障になっています。
したがって、自分の状況に応じて適切に制度を利用するためにも、自分がどの区分の退職者に該当するかしっかりと確認することが大切です。
適応障害の療養や症状による就職の継続が困難な理由から退職した場合には、特定理由離職者に該当することが多いので、確認することをおすすめします。
失業手当の給付額
失業手当の受給額は、次のような計算式で決まります。
失業手当受給額=基本手当日額×給付日数
また、基本手当日額は以下の計算式で決まります。
基本手当日額=賃金日額(退職前6か月の賃金合計÷180)×給付率(50~80%)
つまり、基本手当日額は、自分の退職前の6か月分の賃金の合計を180日で割った額(=賃金日額)に、給付率(50%~80%)を掛けて算出します。給付率は、賃金日額によって異なります。
具体的には、以下のように定まっています。
失業手当の受給額は、基本手当日額と給付日数によって算出されますが、基本手当日額は退職前の給与や年齢によって決まってしまいます。
しかし、給付日数は退職区分によって変動しますので、失業手当の額を最大限に活用するには、退職区分を自分に合った適切なものにすることが大切です。
失業手当を申請・受給する際の注意点
失業手当を最大限に活用して受給する際には5つの注意点があります。
自分で申請しないと受け取れない
1点目は、自分で申請しないと支給されないという点です。
お役所の制度でよくあることですが、失業手当は自分で申請しないと支給されません。
退職して失業者になったからといって失業手当は自動的に振り込まれません。
必ず自分で必要書類を揃え、忘れずにハローワークに行って申請するようにしましょう。
ただし、体調が万全でない中で様々な複雑な手続きを1人でするのはストレスがかかります。きちんと申請できるか不安な方は、給付金の申請サポートサービス(退職コンシェルジュ)を活用するのがおすすめです。
退職コンシェルジュについて詳しく知りたい方は、参考記事退職コンシェルジュがおすすめな人の記事を参考にしてください。
ハローワークで退職区分を確認すること
2点目は、ハローワークで自分の退職区分を確認することです。
自分の退職理由は、退職時に勤務先がハローワークに提出した書類に記載されており、適応障害で離職すると、ほとんどの場合は自己都合退職者として登録されます。
しかし、退職区分(自己都合退職者・特定理由離職者・特定受給資格者)によって失業手当の給付額や給付スピードが違います。
特に、特定理由離職者の方が自己都合退職者に比べて、
のような優遇措置を受けられます。
特に、適応障害の療養やその病気が原因で離職したときは、
- 自分の意思に反する正当な理由で退職したとして特定理由離職者になる場合がある
ので、自分の登録区分と自分の認識との間にずれがある場合には、必ずハローワークに申し出て修正してもらいましょう。
確実に特定理由離職者として退職したい場合には、退職代行ガーディアンなどの退職代行サービスに退職手続きを依頼するとスムーズに失業手当を受給できます。
おすすめの退職代行サービスは、参考記事【厳選!】適応障害のおすすめ退職代行サービス厳選を参考にしてください。
退職時に、退職理由で「一身上の都合」と記載してしまい、ハローワークにも自己都合退職者として登録されている方が圧倒的に多いです。
しかし、適応障害による就労継続が困難で療養の必要性がある理由などで退職した場合には、特定理由離者に修正が可能か確認することをおすすめします。
雇用保険期間は通算できる
3点目は、雇用保険期間は、退職した会社だけでなくその前に勤めていた会社などの加入期間を通算できるという点です。
- (例)特定理由離職者の場合
- 退職した会社には2週間しか在籍していなかったとしても、前の会社に2年間在籍していてその間に雇用保険にフル期間で加入していた場合には、1年の間に6か月以上雇用保険に加入していたと判断されて、雇用保険の条件を満たすことになる
特に、パートやアルバイトの方で職場を転々とする場合には、通算できるか確認することをおすすめします。
パートやアルバイトでも給付を受けられる
4点目は、パートやアルバイトでも条件を満たせば給付を受けられることです。
パートやアルバイトで就職していた方が適応障害になって退職するケースも多いですよね。
失業保険は、雇用形態に制限はないので、条件を満たせばパートやアルバイトの方でも受給することができるので忘れずに申請しましょう。
パートやアルバイトの方で、1年間で6か月以上雇用保険に加入している期間があれば、対象になる場合があるので確認しましょう。
療養中で失業手当を受給できないときは延長申請をする
5点目は、失業手当の延長制度を活用することです。
失業手当は、就職できる状態にある人が対象なので、退職して適応障害の療養中の方は受給できません。なお、失業手当は受給期限が退職後1年間と定まっているので、1年以上療養を必要とする人は失業手当を受給できずに終わってしまいます。
したがって、退職後に療養する必要がある人は、必ず失業手当の受給期間の延長申請を忘れずに行い、元気になって求職活動をする際に失業手当をもらえるように備えておきましょう。
繰り返しになりますが、これも自分で申請しないと認められませんので、必ずハローワークで申請するようにしてください。
参考記事 失業手当の延長方法はこちら >